部屋の形状と容積
録音の残響の尾から、libsonare は等価な部屋 — 録音と同じように減衰する奥行き・幅・高さ、そしてそれらが囲む容積 — を推定します。
等価なシューボックス
推定はシューボックスモデル、つまり 3 つの寸法で表される単純な直方体の部屋です。実際の部屋にはくぼみ、バルコニー、家具、傾いた壁がありますが、その減衰のふるまいは主に 2 つのまとまった性質 — どれだけの空気を囲んでいるか、面がどれだけ吸音的か — に支配されます。シューボックスは両方をとらえる最も単純な形なので、libsonare は測定された減衰に最もよく一致する直方体の部屋を解きます。
つまり寸法は建築ではなく音響です。実際の間取りではなく、測定された減衰を再現します。長く硬い廊下と、正方形で柔らかい部屋が同じように鳴ることもあり、推定はその鳴りを再現するシューボックスを報告します。それは巻き尺の値とは一致しないかもしれません。組み込みのプリセットルーム — 既知の形状から合成し、それを逆推定したもの — では、推定値を正解値と比べて、ブラインド逆問題がどれだけ近いところに着地するかを確認できます。
容積
容積は囲まれた空間(立方メートル)で、推定寸法(奥行き × 幅 × 高さ)から直接求めます。残響時間がこれに比例して変化するため、部屋の響きを決める最も重要な要素です。
古典的な関係(サビーンの式)がこれを明示します。
RT60 ≈ 0.161 × V / A
ここで V は容積、A は総吸音(表面積に各面の吸音係数を重み付けしたもの)です。この式から 2 つの帰結が出ます。
- 容積が大きいほど尾が長い。 反射の合間に音が進む距離が長くなるため、減衰により多くの反射 — より多くの時間 — を要します。これが、面がそこそこ吸音的でも大ホールが長く鳴る理由です。
- 吸音が多いほど尾が短い。 柔らかく多孔質な面は反射ごとにエネルギーを取り除きます。これが、柔らかい家具の多い小さな寝室が、はるかに大きいが何もない部屋よりデッドになりうる理由です。
容積と吸音はトレードオフの関係です。RT60 が長いというだけでは、部屋が巨大なのか単に反射的なのかは分かりません。しかし推定された吸音と組み合わせると、容積が両者を切り分けます。
そもそもなぜ形状を推定するのか
形状の推定こそが、結果を可視化でき比較できるものにします。素の RT60 という数値は抽象的ですが、リスナーと推定音源シェルを内部に置いて 3D で見回せる再構成された部屋は、測定を空間的なものに変えます。さらに臨界距離は容積と吸音の両方に依存するため、形状の推定は音源距離の流れにも供給されます。
libsonare が部屋をどう再構成するか
libsonare は形状の復元を逆問題として扱います。エネルギー減衰曲線と帯域別の残響時間から総吸音を推定し、サビーンの関係を解いて測定された減衰を生む容積を求め、その容積を応答中のモードと減衰の手がかりに最も整合する比率で奥行き/幅/高さへ配分します。プリセットルームは既知の寸法から生成し、インパルス応答へレンダーして逆推定するため、デモは推定値を正解の形状と並べて示せます。逆問題は単一チャンネルで、拡散したシューボックス的な音場を仮定するため、寸法は実空間の測量ではなく等価な音響的部屋として読むべきです。
関連: 残響時間(RT60 と EDT), 帯域別の減衰と吸音, 音源距離と DRR, 音響解析