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LUFS

LUFS は体感上の音量、つまり聴く人が時間全体でどれくらい大きく感じるかを表す単位です。単なるピークレベル(瞬間的な波形のいちばん高い値)よりもマスタリングで有用なのは、一瞬のピークの大きさだけでは曲全体がどれくらい大きく感じられるかがわからないからです。 ピークが同じ 2 つの曲でも、片方は波形がピーク付近に張り付いている時間が長ければ、その曲の方が大きく感じられます。これが波形の「密度が高い」状態で、音量の大小の差が少なく、全体が詰まって聞こえます。LUFS はその違いを扱うための指標です。

目標値主な用途
-14 LUFSSpotify や YouTube 系の一般的な音楽配信。
-16 LUFSスピーチ、ポッドキャスト、Apple 系、ダイナミクスを残す音楽。
-12 LUFS密度を意図するダンス/クラブ系の大きめのマスター。

なぜ重要か

処理前後を音量差のまま比較すると、大きい方が良く聞こえやすくなります。そのため /ja/mastering デモではラウドネスマッチした A/B をデフォルトにしています。

ラウドネスは配信上の制約の 1 つにすぎません。マスターには十分な True Peak 安全性 も必要で、ダイナミックレンジ は音楽的な意図に合っている必要があります。

METERS · LOUDNESSIDLE
ラウドネス計測 — LUFS・トゥルーピーク・レンジ

バーは再生中の瞬時ラウドネスを追い、パネルは時間ごとのラウドネスです。インテグレーテッド LUFS は全体を表す一つの数値、トゥルーピークはサンプル間も含む本当の上限、LRA はラウドネスの動く幅を表します。ウィンドウを切り替えると、速い瞬時メーターと滑らかな短時間メーターを比べられます。

ウィンドウ

ターゲットの選び方

迷ったら -14 LUFS から始めます。多くの音楽配信や動画プラットフォームで扱いやすく、リミッターを過度に押し込まなくても到達しやすい値です。

スピーチやポッドキャストは、子音・息継ぎ・部屋鳴りが聞き取りやすいことが優先されるため、少し余裕のある -16 LUFS が扱いやすいことがあります。ダンス/クラブ系では -12 LUFS 付近を狙うこともありますが、True Peak、安全な低域、長時間聴いたときの疲れを必ず確認します。

配信プラットフォーム側で正規化が行われる場合、ターゲットを大きく超えたマスターは結局下げられて再生されます。ターゲットを上回ること自体に音量上の利点があるとは限らず、リミッターを深く動かして得た「数字上のラウドネス」が、再生時には削られたパンチだけ残るという結果になることもあります。

数値だけで判断しない

ラウドネス目標に近いことは、マスターが良いことの十分条件ではありません。Integrated LUFS が合っていても、リミッターが強く働きすぎてトランジェントが潰れている、低域が痩せている、子音が痛い、という失敗は起こります。

逆に、素材によっては目標より少し低い方が自然に聴こえることもあります。特にアコースティック・スピーチ・余白の多い音楽では、数字を追い込むより、ラウドネスマッチした A/B と別環境でのトランスレートを優先します。

実装メモ

libsonare のラウドネス測定は、ITU-R BS.1770 と EBU R128 系列の勧告で定義されたゲート付き Integrated LUFS モデルに従います。そのうえで、マスタリングチェーンはラウドネス目標とリミッターシーリングを別々に扱います。ラウドネス目標は曲全体の聴感レベルを決め、シーリングはサンプルピーク/True Peak が超えてはいけない上限を決めます。

この 2 つを分けることで、「十分なラウドネスはあるがピークが危険」「ピークは安全だが目標に届かない」といった状態を区別できます。デモのレポートでも入力 LUFS・出力 LUFS・適用ゲインを分けて出します。

LUFS の測定値はレンダリング後のバッファに対して計算します。プレビュー中の一瞬のラウドネスではなく、書き出し対象全体の Integrated 値を見るためです。Short-term や Momentary の動きは聴感判断に役立ちますが、配信ターゲットの判定とは分けます。

関連: A/B 比較, True Peak, ダイナミックレンジ