マスタリングプリセットの選び方
プリセットはあくまで出発点です。ソースに合いそうなチェーン形状を選ぶものではあっても、ユーザー以上に楽曲の意図を理解しているわけではありません。
素材の密度・トランジェントの性質・リリース文脈に近いプリセットを選び、その後でクイックマスターのマクロや Studio モードで小さく補正していきます。
プリセット早見表
| プリセット | 向いている素材 | 守りたいもの |
|---|---|---|
| Pop | 一般的な現代ポップス系のミックス。 | バランスの取れたラウドネス、ボーカルプレゼンス、安定したトーン。 |
| EDM / Dance | 密度の高いエレクトロニック楽曲。 | コントロールされたピーク、タイトなリリース、強い最終レベル。 |
| Acoustic | スカスカな/自然なレコーディング。 | トランジェント、息遣い、控えめなコンプレッション。 |
| Hip-Hop / R&B | ビート主導の楽曲とフォーカスされたボーカル。 | 低域の重みとボーカルセンター。 |
| AI-Generated | Suno/Udio などの生成音源、AI 由来のアーティファクト。 | ディノイズ、上側帯域の補完、過剰にならない仕上げ。 |
| Speech / Podcast | 朗読・ナレーション・スピーチ中心の素材。 | 声の明瞭さ、控えめなステレオ幅、安定したラウドネス。 |
選び方
2 つのプリセットがほぼ同じに聞こえるなら、副作用の少ない方を選びます。大きく派手に聞こえるプリセットは、数秒では印象的でも、長く聴くと疲れることがあります。
実用的な流れ:
- 明確に別ジャンルだと言える場合を除き、まず Pop から始める。
- ソースにもっとも近い専用プリセットを試す。
- レンダリングし、ラウドネスマッチングで比較する。
- 専用プリセットが過剰処理に感じたら、Pop か Acoustic に戻す。
- 「何のために動かすか」を言葉で説明できるコントロールだけ、Studio モードで触る。
AI 生成音源
AI 生成音源には、弱い上側倍音・ヒスノイズ・にじんだトランジェント・光沢のあるリバーブ的な残り、といった特徴が混じっていることがあります。AI-Generated プリセットがリペアと Air バンド復元寄りなのは、このためです。
ただし「生成音源だから常に AI プリセット」というわけではありません。ソースがすでに明るすぎたり脆い倍音を持っていたりする場合は、もっとシンプルなプリセットのほうが合うこともあります。
AI-Generated プリセットを反射的に使わない
このプリセットのリペアと Air バンド復元は、くぐもった/ヒスの多い/アーティファクトを含むソースを前提にしています。すでに明るい・脆い素材では過剰処理になります — Pop のようなシンプルなプリセットのほうが安全です。
実装メモ
プリセットはレンダリング前に、libsonare のマスタリング構成へ変換されます。プリセットはコンプレッサーのタイミング・レシオ挙動・リペア有効化・Air バンド量・エキサイターのフォーカス・ステレオ幅の上限・リミッターのリリース挙動などを調整します。クイックマスターの Tone・Width・Dynamics マクロは、これらのプリセット既定値に対するマクロレベルのオフセットとして加算されます。
Studio モードで個別のステージを直接変更した場合は、その状態が JSON レポートにそのまま反映されます。レポートには適用されたプリセット名と、上書きされたパラメータ値の両方が記録されるので、後から再現する際に「どのプリセットを元にして、どこを動かしたか」を追えるようになっています。